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補助金・助成金とは?
補助金や助成金は、国や地方自治体等が公的資金を財源として特定の事業や取り組みに対する支援を目的とした制度です。
創業時に資金が十分でない場合の調達方法としては、銀行などの金融機関からの融資が代表的ですが、融資は借金であり、返済義務が生じます。
これに対して、補助金や助成金は原則として返済の必要がなく、設立してまもない会社の金銭的リスクや負担を軽減できる利点があります。
補助金と助成金の違いとは?
助成金は申請には一定の条件がありますが、要件を満たせば給付を受けられることが一般的です。
対して補助金には、予算・件数に上限があり、申請したからといって必ずしも受給できるとは限りません。一般的には1ヵ月程度の公募期間が設けられていますが、公募期間が短く倍率も高いため、審査に通らない可能性もあります。
審査に通るためには、必要書類を揃えるとともに、事業計画書の内容を作り込み、受給の必要性について適切にアピールすることが重要です。
創業時に使える補助金・助成金
創業時に申請できる主な補助金・助成金は以下の3つです。
- 小規模事業者持続化補助金
- キャリアアップ助成金
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象に販路開拓にかかる経費のうち3分の2、最高50万円まで補填を受けられる国の補助金です。令和4年度第2次補正予算において、インボイス転換事業者を対象に「一律に50万円の補助上限上乗せ」となります。これにより、インボイス転換事業者の補助金額は最大で250万円となりました。
また、対象経費には税理士への相談費用も含まれます。
ほかにも販路拡大の方法など、商工会議所の指導を受けられることも大きなメリットです。その地域で事業をスタートしたばかりの人にはうってつけの制度といえるでしょう。
その年の予算規模や、申請数などで難易度が大きく左右されるものの第10回の採択率は63.5%、ここ数回は約6割の採択率になっていることから、ほかの補助金に比べれば比較的ハードルは低いと言えそうです。今後も高採択率が継続するとは限りませんが、チャレンジする価値はあるでしょう。
採択されるためには、ポイントを抑えた申請が大切です。万が一、不採択だった場合でも申請期間内に再申請することが可能です。申請書の内容を見直し、ブラッシュアップしたうえで改めて申請しましょう。
対象 | 卸売業・小売業・サービス業・製造業など、 従業員数5名以下(製造業は20名以下)の小規模事業者 |
補助率 | 補助対象となる経費の3分の2以内 |
補助額 | 上限50万円以内 (インボイス転換事業者の補助上限が50万円の上乗せ、補助金額は最大で250万円) |
申込方法 | 郵送、もしくは電子申請 ※事前に最寄りの商工会議所で「事業支援計画書」を作成・交付してもらう必要があります。 |
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
条件は「正社員化支援」に加え、「処遇改善支援」など、全部で7パターン用意されています(助成金の額はそれぞれ異なります)。創業時にアルバイトとして雇っていた人を社員化するなど、人材に関する変更を行う際はチェックしておくべき仕組みです。
以下、正社員化コースの例となります。
対象 | 6ヵ月以上雇用実績のある契約社員・パート社員を正社員に登用し、さらに6ヵ月継続雇用した場合 |
支給金額 | 該当者1人につき最大57万円<72万円> ※<>は生産性の向上が認められる場合の額 |
申込方法 | キャリアアップ計画を作成し、労働局またはハローワークに提出 |
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)」は、中小機構と都道府県、金融機関等が資金を拠出し、ファンド(基金)を造成し、その運用益により中小企業者等を支援する事業です。
「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2区分があり、地域独自の取り組みとして、さまざまな地域中小企業応援ファンドが全国にあります。特定の費用についてファンドから助成を行う仕組みで、助成金に該当するため、事業者は返済の必要はありません。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、都道府県によっては実施されていないところもあります。まずは、中小機構のサイトで実施の有無を確認しましょう。
また、ファンドによって問い合わせ先や応募要項、申請方法はさまざまです。こちらも、中小機構に掲載されているファンドの一覧から問い合わせ先や概要を確認するのが確実です。問い合わせ先で申請方法を確認したのちに、申請受付を行っている公益財団法人などで申請を行います。
地域中小企業応援ファンドの一覧は以下中小機構のサイトより確認できます。
ほかにも、その年の予算によって新しく生まれる助成金や補助金のほか、金融機関や財団法人などが単発で募集しているものもあるので、創業前~創業直後は、定期的に省庁のプレスリリースをチェックしておくとよいでしょう。気になる助成金・補助金を見つけたときは、主催団体に相談してください。
助成金・補助金を受けるときの注意点
返済義務が生じない助成金や補助金とはいえ、各主催団体に合わせて書類を整えるのは大変な作業です。また、それだけの労力をかけてたとしても、必ず受け取れる保証はありません。
助成金や補助金の申請から、実際に受け取るまでに注意すべきポイントをまとめました。
メリットが大きいものは倍率も高くなりがち
補助金・助成金は返済義務がありません。さらに、補助金・助成金の中には募集の間口が広かったり、支給額が高額だったりと、受ける側のメリットが大きいものもあります。これらは人気が高く、応募は殺到します。
補助金や助成金をもらうために開業するのではなく、まずは計画をしっかり立てて「サポートする価値が十分にある」と思われる事業を作っていくことが重要です。
提出書類の準備には時間と労力がかかる
事業計画書や収支計画、申請書類など、助成金や補助金の制度に応募する際は、いくつもの書類を用意しなければいけないケースがほとんどです。
もちろん、ただ書類を揃えるだけではいけません。
高い倍率を勝ち抜くためには、主催団体の目的をくみ取って「この事業には価値がある」と認識してもらえるようにアピールすることが大切です。なお、すでに創業している場合は、創業から現在までの各種帳簿が必要な場合もあります。
すべての書類を準備するには、それなりの時間と労力がかかることを覚悟しておくべきでしょう。時には専門家に書類作成の一部を依頼したり、相談をしたりする必要が生じて思わぬコストがかかるケースも考えられます。
しかも、補助金や助成金の採択は約束されたものではありません。どれだけ優れた書類を用意できたとしても、不採択になる可能性があることは頭に入れておきましょう。
複数受給ができないケースもある
税金を財源とする政府系の補助金・助成金は、複数受けられない可能性が高いです。
特に、対象となる同一の経費に対して複数の助成を受けた場合など、実際に拠出した経費よりも受け取るお金のほうが多くなってしまう可能性があるため、厳格にルールが定められています。
なお、応募自体は同時に複数行うことが可能です。申請書類にも共通するものが多いため、同時に書類を作成していくつかのプロジェクトに応募し、採択されてから選ぶという考え方でも構いません。
ある程度の自己資金は必要
これだけ補助金や助成金があれば「自己資金は貯めなくても良い」と考える方もいますが、助成金や補助金はあくまでも「足りない分を補う」制度です。
事業を始める以上、ある程度の自己資金は用意しておく必要があります。特に補助金の場合、実際に使った経費を計算した上で受給額を申請→受給という流れなので、はじめに資金がない状態では事業が運営できなくなってしまいます。
また、融資を受ける場合にも自己資金がゼロというのはマイナスに働きますので、やはりある程度の余裕を持つことが必要です。